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休業中二回目の更新は、過去に寄稿した「食」をテーマにしたコラムです。書いたのはもう5、6年前くらいになるでしょうか?ちょうど中野に「Tsui-teru!」というお店がぶいぶい言わせていただ頃だったと思います。熟成肉が一般的に認知し始められた頃ですね。それではどうぞ↓↓
「若い娘より熟女が美味しいわけ~お肉の最前線」
日本人は、繊細で贅沢な舌を持っている。釣りたての魚を生で食べて、新鮮さ故の旨さを知ることができる一方で、わざと腐らせた(発酵させたり熟成させたりした)食品の複雑な味にさえも舌鼓を打つことができるのだから。しかしもったいない事に、その繊細な舌を持った日本人のほとんどが、まだまだ味わったことのない味がある。それが「エイジド・ビーフ」だ。
エイジドとは、Ageの過去形のAged。つまり、「わざと日数をかけて熟成させた」というニュアンスになる。そして、エイジド=熟成の中でも、温度管理と湿度管理と細菌管理を施して最新で細心の管理で熟成させたのがドライ・エイジド。一定期間(通常は21日間)熟成させると、肉の繊維(たんぱく質)が分解され柔らかくなり、旨み成分のアミノ酸が増加、凝縮される。今までに経験したことのないジューシーで濃厚なお肉の誕生である。しかもドライ・エイジドには、赤みのお肉が使われるのでカロリー的にも安心なのだ。
この「ドライエイジドビーフ」だが、最近は日本でも少しずつ親しまれるようになってきた。輸入や技術等の問題から普及が遅れたが、現在は「ドライエイジングビーフ協会」なる団体も設立され、技術が広まり、乾燥熟成庫を持つ店も増えてきた。しかし未だに、熟成にかかる経費や、可食部分が目減りすることによる原価の高騰で、普通ではなかなか手が出しにくい現実もある。「価値」を問われる昨今、若い世代が「価値のあるもの」を積極的に消費すれば、「エイジド・ビーフ」のような知られざる美食が身近になるのではないだろうか。そのために私は、真に美味しいものを求めて、夜な夜な飲み歩く。体重と引き換えに。